株式会社堀江コンサルティング

ブログ「海外駐在の極意」

海外駐在の極意 No.2【タイ】

2017.12.06

上海と競い合う、世界最大級の日本企業会員数を誇るバンコク日本人商工会議所の事務局長を務められた大阪商工会議所の松本さん。実は95年4月から2年間、上海の事務局長も務められ、現在大阪でも国際部でoutbound/inbound双方のグローバル企業活動を牽引しておられます。ご自身のチームのマネジメントはもちろんのこと、海外に進出する日本企業から様々な相談を受けて来られました。「日本人にはもっともっと世界に出て行って世界を見て欲しい」という言葉が印象に残りました。

氏名
松本敬介
現職
大阪商工会議所 国際部課長
国・都市
タイ・バンコク
期間
2003年4月7日~2007年4月30日 4年1か月 
会社名
バンコク日本人商工会議所
役職
事務局長
機能
日本・タイ両国の商工業・経済の発展と交流
従業員数
12人 日本人(駐在員 1名、現地採用 5名)、タイ人6名
直属上司
現地商工会議所会頭
直属部下
日本人(現地採用)5名、タイ人6名がフラット
楽しかったこと
・日本にいると大阪の中堅・中小企業さんとのやりとりが多いですが、バンコクでは、規模を問わず多業種の日本全国の企業とおつきあいができました。日本及びタイの、官民学から、普段会えないような偉い人たちも含めていろいろな方とお会いでき、知り合いもたくさんできました。
・日本企業が注目し、投資を増やしていたアセアン・タイで、日本企業・タイ企業の成長を見ることができました。(特に自動車は、駐在期間中に4綸タイ国内生産台数が100万台を突破し、車体、部品メーカーの進出が増加しました。)タイの日本企業はみなさん景気がよく、駐在員はみんな楽しそうでした。バンコクにいましたが、チェンマイやプーケットなど、タイ全国の企業との連携も深めることができました。
・商工会議所会員企業数が1100社から1300社に増加。残念ながら駐在期間中、会員企業数も、日本人学校生徒数も、上海に抜かれて世界一位から世界二位になりましたが(笑)。90年代に上海で商工会議所を立ち上げるために参考にしたバンコクに自分が駐在するとは思いもしなかったので面白い縁を感じました。
・経済ミッションで世界中の様々な国・地域に行きました。プライベートでも、タイはハブ空港だったので、エジプト、イタリア、ニュージーランドなどいろいろなところに旅行できました。家族も、タイ語、タイ料理、テニスやソフトボールなど、駐在生活を謳歌できました。
・海外から日本、中でも自分の守備範囲大阪を見ることができたのもよかったです。大阪を知らない人がいることはショックでした(笑)。
・タイ日工業大学設立に貢献できたことは嬉しかったです。
苦労したこと、大変だったこと
・いろいろな業種と平等公平におつきあいすることを心がけました。リソースも限られていましたので、1300社という会員企業全てのご要望に必ずしもお答えすることができないのが心苦しかったです。日本でお世話になっている中堅中小企業の方々を必ずしも十分にサポ―トできなかったかもしれません。
・事務局長という立場で日本人社会では顔が売れていたので、動きづらかったです(笑)。
マネジメント上で成功したこと
・優秀なタイ人には支えられ、感謝しています。彼女の育成に注力し、彼女は今も、20年以上勤続し、マネジャーとして彼女自身が部下育成に注力しているのはとても嬉しいことです。
・少人数でも評価に関するクレームは多かったので、評価制度を新しく構築し不平不満をおさめることができました。
マネジメント上で失敗したこと
・商工会議所内は、人数が少ないとはいえ、現地採用の日本人とタイ人がいて苦労しました。現地採用日本人は、日本語は話し、会員企業とのやりとりにはとても便利です。ただ、中身はタイ人化していて、時間厳守しなかったり、日本人風に扱われなかったりしました。かといって、タイ人にようにタイ政府や企業とタイ語で交渉ができるわけではなかったので活用が難しかったです。
・多くの企業から相談が多かったのは、採用(採用の仕方、採用後の人材マネジメント)、労働法(裁判・訴訟)、調停、解雇などです。
成功するための鍵となる能力・スキル
・人材の流動は日本よりずっと激しいですし、組織への「忠誠心」が強いわけではありませんから、優秀だからといって誰かに頼り過ぎず、常に「代わり」や「後継者」を準備・育成しておくことが必要です。
・採用は同席してしっかり見極めないと、友達・親戚だらけになります(笑)。
現地のマネジメント
・「焦らず、諦めず、あてにせず、でも最後には何となる」、「遅々として進む」
・優秀な人材はちゃんといますので、優秀な人材を探し、採用し、育成することが大切です。
これから海外駐在する人が準備しておくべきこと
・タイは日系企業が多く、日本食もありますが、海外なので日本ではない、ということは忘れがちですが重要です。タイ人も、日本人と似ているように見えても、日本人ではないので、付き合い方もマネジメントの仕方も異なります。
・タイは、インフラ、人材、政府、住居、企業活動、企業設立手続き、ロジスティックス、金融、部品供給などなど、整備されていてわかりやすいところですし、人は親日的。海外ビジネスの初級編にはもってこいの場所です。タイでうまくできなかったらどこでも無理だと思いますよ。
・現地では、業種や系列、企業といった垣根を超えて、年代を超えて、いろいろな人に頼って、悩みを聞いてもらうようにすべきです。
次の駐在はどこがいいか?
・上海・バンコクとアジアばかりだったので、今度は欧米に行ってみたいです。