海外駐在の極意 No.5【ブラジル】
2018.02.02
5年間のタイ駐在経験を持ち、その後ブラジルに3年間駐在。「タイもブラジルも仕事するには最高の国」と楽しそうにお話しされる。「ブラジルは国家としては途上国だが極く限られた大卒人材の優秀さとマインドは先進国と何ら変わらない実力主義の国。できる人材にはきちんと特別な処遇をして動機づけ、引き留めることが大切。」 他国にも通じるマネジメントの鍵のようだ。
※お写真は、ピラニアと一緒の松澤さん
- 氏名
- 松澤巧
- 現職
- 味の素株式会社 執行役員グローバル人事部長
- 国・都市
- ブラジル・サンパウロ
- 期間
- 2014-2017年
- 会社名
- ブラジル味の素
- 役職
- 常務 (Superior Director) Corporate 部門統括
- 機能
- 生産・営業
- 従業員数
- 3,000人 (ほぼ全員が正社員)
- 国籍(JS/NS)
- JS 30人(成長途上なので多い、成熟してくると現地化が進む)
- 直属上司
- 現地法人社長
- 直属部下
- Corporate部門、各部部長は全てブラジル人。
松澤さんと日本人の取締役の2人で統括。 経理だけでも100人(ブラジルコストと呼ばれている。税制が複雑で、税金operationのために数十人の雇用が必要となる)
M&AやIT、経理の専門家としてJSが3名managerとして駐在。
- 楽しかったこと
- めったにいけないところで働くことができた。見るもの聞くもの何もかも珍しかった。
- 苦労したこと、大変だったこと
- 治安は悪く、強盗にもあう。サンパウロでは毎年、住民100人に1人の割合で強盗にあうと言われている。
とは言え、自分は単身だったが、家族帯同でいけばもっといろいろなつながりができたり、いろんなところに旅行することもできて楽しかったと思う。 - マネジメント上で成功したこと
- 一人ひとりの能力や専門性は非常に高く、進むべき方向性を示せば、細かい指示は不要。
各部長がとてもしっかりして任せることができた。 - マネジメント上で失敗したこと
- 人材の引き留め=retentionで苦労した。ただ、流動性の高い労働市場なので、払うべきものを払えば人材は採用できる。
組織間の連携や、strategyとのalignment、みんなでvisionをつくること、などは自らが意識してやる必要があった。 - 成功するための鍵となる能力・スキル
- 流動性の高い市場ゆえ、「やめられたくない優秀な人」にはメリハリをつけて、特別な処遇をする必要がある。誰かを立てれば誰かは落ちることもあり、誰が特別な処遇の対象者かを特定しなければならない。
- 現地のマネジメント
- 2億人の大きな国家。市場としては発展途上国だが、大卒は国民の数パーセントしかいないエリート。彼らは先進国と同じマインドを持ち非常に優秀で処遇も高く、任せられる。この数パーセントが拡大すれば素晴らしい国家になる。
人材は、日系、ヨーロッパ系、アジア系、アフリカ系の多民族国家ゆえ、日本人だからということだけで尊敬されることもなければ見下されることもない。
ブラジルでは物価が高く、労働法は極めて労働者保護だが、一方で雇用保障はなく、また社会保障もきちんと整っていない。そのため、みんな、高いポジションについて、いい生活がしたい。年齢は関係なく、実力が全て。ライバル意識はあるが、堂々といがみあったりはしない。
チームワークを取らせるのはmanagerの仕事。チームワークがとれないことが解雇の理由になることもある。
みんな長期休暇で1か月間休む。休暇中はメールが返ってこない。その間どう乗り切るかが勝負。 - これから海外駐在する人が準備しておくべきこと
- 安全第一。
雇用するブラジル人が優秀だけに、日本本社から赴任する駐在員のミッションとやりたいことを明確化させて、現地の人と関係構築をすることが必要。国としても経済規模は世界のtop 10に入り、雇用するブラジル人は先進国と変わらないほど優秀なので、途上国という意識でいくべきではない。 - 次の駐在はどこがいいか?
- 新興国で事業を立ち上げ、その国に貢献するような仕事に関わりたい。