海外駐在の極意 No.9【ドイツ・ベルギー】
2018.11.02
グローバルリーダー研修や海外赴任前研修では、”play a role”の概念についてよくお話をします。海外ではレストランに行っても案内、オーダー取り、配膳、会計、掃除、と細かく役割が分かれています。東南アジアのメイドは、外国人にメイドとして仕える役割を演じながら、自分もメイドを雇うという役割を演じています。仕事はヒトについてくる風土で育った日本人には、「role=役割」を演じるという意識が希薄だと思います。海外駐在では、赴任後の役割に応じて、経営者、管理職、スタッフ・トレーニーという3階層に大きく分かれます。いずれの場合でも、日本の階層に比べ2階層程度インフレし、多くの外国人部下を持ち、外国語で仕事をし、業務の幅が広がり、権限が増えます。自分の信念は曲げまいとしても、自分の性格や価値観に拘わらず、組織から与えられている使命を全うするために、厳しくなってみたり、negative feedbackしてみたり、”play a role”=役割を演じることが大切です。
今回は、コニカミノルタでドイツとベルギーに駐在してご家族と一緒に貴重なご経験をされ、その後、「世界で戦うビジネスマンの育成」に従事しておられるLIFE SHIFTJAPAN株式会社代表取締役玉本社長にお話をお伺い致しました。
- 氏名
- 玉本 潤一
- 現職
- LIFE SHIFT JAPAN株式会社 代表取締役
- 国・都市
- ドイツ(ハノーファー)・ベルギー(ブラッセル)
- 期間
- ドイツ2005年11月~ 2011年6月(5年9ヶ月) /ベルギー2011年7月~2014年6月(3年間)
- 会社名
- コニカミノルタ ヨーロッパ統括・ドイツ法人・ベルギー法人
- 役職
- General Manager, Corporate Planning
- 機能
- 複合機・プリンタの販売・サービス
- 従業員数
- ドイツ 1,350人、ベルギー250人
- 国籍(JS/NS)
- 日本人:ドイツ2人、ベルギー1人、その他は現地人材 直属上司はドイツでは日本人、ベルギーではベルギー人とオーストリア人。部下はベルギー人6人。
- 楽しかったこと
- ・9年近く欧州に駐在したので、妻、娘の3人家族で欧州各国の都市に沢山旅行に出かけ、最高の思い出を作りました。今となっては夢のようです。子供が小さかったのであまり欧州での記憶を留めていないのは残念です。子供が大きくなった今、また実現したいと思っています。
・欧州各国のマネジメントが集まる会議や大きい代理店会議では、欧州特有のダイバーシティーやダイナミズムを感じることができ、本当に楽しく興奮しました。 - 苦労したこと、大変だったこと
- ・オクトーバーフェストで飲み過ぎたこと。
・車のスピード違反で罰金を支払ったこと。 - マネジメント上で成功したこと
- ・現地の皆さんから信頼を得ながら、経営メンバーの一員として会社の経営に携わり、ドイツでマーケットシェア1位、や、ベルギーで3年連続売上アップなど、大きな目標を達成した時の喜びは忘れられません。
- マネジメント上で失敗したこと
- ・法人直販セールスや海外へのディストリビューションセールス経験を引っさげて意気揚々とドイツ子会社に乗り込んだものの、1年目に現地人材によるマネージメント層の大きな組織の壁にぶち当たり、1年間思うように仕事ができませんでした。正直、当時の日本人上司も現地人材から受け入れられていると言える状態ではなかったため、日本人上司から期待するようなサポートが得られず、一人で悩みこんでしまいました。ドイツ語の週次経営会議にポツンと参加しており、開催する月曜は憂鬱でしかなかったです。今となっては、私も27歳と若く経営を理解しておらず、現地人材のマネージメント層も海千山千の経歴を持っており、彼らの態度もよく理解できます。早めに「学ぶ姿勢」で彼らと接していればもう少し早い立ち上げができたと思います。
・ベルギー赴任2年目34歳の時に、汎欧州レベルの大規模の組織構造改革プロジェクトにプロマネとして参画しました。日本人の参画は数名しかいない現地人材主導のもので、各国から選ばれた人間同士がクロスボーダーでドンパチやり取りするそのプロジェクトは、本当のグローバルビジネスそのものでした。
・各機能(セールス、マーケティング、サービス、ロジスティックス、ファイナンス、HR、IT)ごとの利害、各国のマーケット状況、労働組合の事情もあり、早く効果を出すことが求められる中、進むものも遅々として進まずの状態でした。
・苦しかったのは、欧州全体最適で経営判断を下す構造改革プログラムだったために、各国各場所で人員の降格・配置転換・減員に至るものもありました。過去に世話になったドイツ人や一緒に働くベルギーのマネジメント層のリストラに関わるものもあり心を苦しめました。自分の覚悟不足が混乱を招いたこともありました。プロジェクトがコンフィデンシャルなものだったためその思いを誰にも伝えられず、経営者の厳しさを少し体験することができました。 - 成功するための鍵となる能力・スキル
- ・自分に対する確信、セルフリーダーシップスキル。
・コミュニケーション能力。特にコンテクスト(背景にある各国事情や人種の違い)を理解すること。2国以上に駐在することでより習得することができるようになると思います。
・環境適応能力 - 現地のマネジメント
- ・できる限り議論の段階から関係者を巻き込み、当事者意識をもって経営参画してもらうこと。トップダウンが効きにくい土壌です。
・高い役職で駐在しても、現地人材の組織に飛び込むこと。 - これから海外駐在する人が準備しておくべきこと
- ・海外では、母国語ではなく、2階層程度日本より下駄を履き、経営に本格的に関わることになる方も多いと思います。役職を盾にすることなく「個」として堂々とオープンに義論をし、最後は自分を信じて決断するためのリーダーとしてのブレない自分軸を持つことが求められます。「自分は何者か」、「どんな価値観をもっているか」、「人生で何を成し遂げたいのか」、「人生の中で赴任するミッションはどういう位置付けになるか」等、自分のことを再定義をしておくことが重要だと思います。
海外駐在の機会は人生に何度もあるものではなく、駐在経験は会社に留まらず、国の財産だと思っています。海外駐在される方は、海外生活を公私ともに充実したものにされ、自信満々でご帰国して頂きたいと願っています。 - 次の駐在はどこがいいか?
- ・ドイツ・ミュンヘン
街並み、クリーンさ、街のスケール感、活気のある経済、独特なバイエルン気質、バイチェン料理&ビール、欧州各国へのアクセス(ハブ空港)、日本人コミュニティー、オクトーバーフェスト